日本最古のウイスキーが知りたい

日本最古のウイスキーが知りたい

日本最古のウイスキーとして挙げられるのは、一般的には「山崎」です。

ただし、「日本で最初に造られたウイスキー」と「現在も販売されている最古の銘柄」は分けて考える必要があります。

  • 1923年:サントリー創業者の鳥井信治郎が、京都・山崎に日本初の本格的なウイスキー蒸留所を建設開始
  • 1924年:山崎蒸溜所が竣工し、本格的なウイスキー製造を開始
  • 1929年:日本初の本格国産ウイスキーとして「白札」を発売
  • 現在:「山崎」は山崎蒸溜所を代表するシングルモルトウイスキー

つまり、厳密には「最古の銘柄=山崎」ではなく、「日本初の本格ウイスキー蒸留所=山崎蒸溜所」という整理が正確です。

ちなみに、前回のお話につながる重要なポイントがあります。
山崎は1924年からの歴史を持つ一方、「響」は1989年に登場した比較的新しいブランドです。

日本のウイスキー史|1923年の山崎から「響」まで

日本のウイスキーを語るうえで、外せないのがサントリーの「山崎」「白州」「知多」「響」です。

「山崎と白州はシングルモルトなのに、響はなぜ複数の蒸溜所の原酒を使うの?」

「知多はグレーンウイスキーなのに、なぜ響と関係があるの?」

こうした疑問を理解するには、1923年の山崎蒸溜所から始まる日本のウイスキー史を振り返るのが一番分かりやすいでしょう。

1923年、日本の本格的なウイスキーづくりが始まる

日本のウイスキー史における大きな転換点が1923年です。

サントリーの創業者・鳥井信治郎は、京都と大阪の境に位置する山崎の地に、日本初となる本格的なウイスキー蒸溜所の建設に着手しました。

それが現在の「山崎蒸溜所」です。

山崎は、サントリー公式でも「日本最古のモルト蒸溜所」とされています。

そして1929年には、日本初の本格国産ウイスキー「白札」が発売されました。

つまり、

1923年 → 山崎蒸溜所の建設開始

1929年 → 日本初の本格国産ウイスキー発売

という流れで、日本のウイスキーづくりが本格的に動き始めたのです。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

日本のウイスキー史 年表

出来事山崎白州知多
1923年山崎蒸溜所の建設に着手★スタート
1924年山崎蒸溜所竣工・製造開始
1929年日本初の本格国産ウイスキー「白札」発売
1937年「角瓶」発売★原酒
1972年知多蒸溜所の前身を設立★誕生
1973年白州蒸溜所竣工★誕生
1984年「山崎」発売★ブランド誕生
1989年「響」発売★原酒★原酒★原酒★ブランド誕生
1994年「白州」発売★ブランド誕生
2015年「知多」発売★ブランド誕生
2023年サントリーウイスキー100周年
2026年現在

※知多蒸溜所は1972年に設立され、1973年にウイスキー蒸溜を開始。「知多」というシングルグレーンウイスキーの商品が発売されたのは2015年です。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

1970年代、山崎だけではなくなる

日本のウイスキー市場が成長する中、サントリーはさらに多様な原酒をつくるため、新たな蒸溜所を設立します。

1972年に設立されたのが「知多蒸溜所」です。

そして翌1973年には「白州蒸溜所」が竣工しました。

ここで重要なのが、山崎・白州・知多は、それぞれ役割が違うということです。

山崎蒸溜所

モルトウイスキーをつくる蒸溜所です。

山崎蒸溜所のモルト原酒だけでつくられるのが「シングルモルトウイスキー山崎」です。

白州蒸溜所

こちらもモルトウイスキーをつくる蒸溜所です。

ただし、山崎とは異なる環境・製法によって、異なる個性のモルト原酒を生み出します。

その原酒を使ってつくられる代表的な商品が「シングルモルトウイスキー白州」です。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

知多蒸溜所

山崎・白州とは大きく役割が異なります。

知多蒸溜所はグレーンウイスキーの蒸溜所です。

主原料にはとうもろこしが使われ、連続式蒸溜機によって多様なタイプのグレーン原酒をつくっています。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

1984年、「山崎」が誕生

山崎蒸溜所が1924年にウイスキーづくりを始めてから約60年。

1984年に、ついに「山崎」というブランドが発売されます。

現在の「シングルモルトウイスキー山崎」です。

ポイントは、

山崎蒸溜所のモルト原酒だけを使用している

ということ。

「シングルモルト」とは、単一の蒸溜所でつくられたモルトウイスキーを意味します。

したがって、

山崎蒸溜所 → モルト原酒 → 山崎

という非常に分かりやすい関係になっています。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

1989年、「響」が誕生

そして1989年。

サントリー創業90周年を記念して「響」が発売されます。

ここで、山崎と響の大きな違いが生まれます。

「山崎」は山崎蒸溜所のモルト原酒だけでつくるシングルモルト。

一方、「響」は複数のタイプの原酒をブレンドしてつくるブレンデッドウイスキーです。

つまり、

山崎=単一蒸溜所のモルト

に対して、

響=複数の原酒をブレンド

という違いがあります。

響は、サントリーが長年培ってきたブレンド技術の集大成として誕生しました。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

なぜ「響」には山崎・白州・知多が関係するのか?

ここが、日本のウイスキーを理解するうえで最も面白いところです。

現在のサントリーの国内ウイスキーづくりを大きく分けると、

山崎蒸溜所
→ モルト原酒

白州蒸溜所
→ モルト原酒

知多蒸溜所
→ グレーン原酒

となります。

そして、それぞれの原酒には異なる個性があります。

それらをブレンダーが組み合わせることで、複雑で調和のとれた味わいをつくり出します。

知多蒸溜所自身も、多様なグレーン原酒が「響」や「角瓶」などのブレンデッドウイスキーに使われ、山崎・白州のモルト原酒の個性を引き立てていると説明しています。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

「山崎」と「響」の違いを簡単に図解

山崎

山崎蒸溜所

モルト原酒

ブレンド

シングルモルト「山崎」

つまり、「シングルモルト」とはいっても、山崎蒸溜所でつくられた複数のモルト原酒をブレンドすることはあります。

「シングル」は「樽が1つ」という意味ではなく、蒸溜所が1か所という意味です。

山崎蒸溜所

モルト原酒

白州蒸溜所

モルト原酒

知多蒸溜所

グレーン原酒

ブレンダーが配合

「響」

このように考えると、山崎と響の違いが非常に分かりやすくなります。

では、知多はなぜ「とうもろこし」なのにバーボンではないのか?

ここも誤解されやすいポイントです。

知多蒸溜所では、とうもろこしを主原料とするグレーンウイスキー原酒をつくっています。

しかし、

とうもろこしを使えばバーボンになる

わけではありません。

バーボンには、アメリカで製造することなど、法律上の要件があります。

そのため、

知多=とうもろこしを主原料とする日本のグレーンウイスキー

であり、

バーボンではありません。

そして、この知多のグレーン原酒が、山崎や白州などのモルト原酒と組み合わされ、ブレンデッドウイスキーの味わいを支える重要な役割を果たしています。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

100年かけて完成した「3つの蒸溜所」の役割分担

1923年。

日本初の本格的なウイスキー蒸溜所として山崎蒸溜所の建設が始まりました。

そこから約50年後。

1972年に知多蒸溜所、1973年に白州蒸溜所が加わります。

そして1984年に「山崎」、1989年に「響」、1994年に「白州」、2015年に「知多」という代表的なブランドが誕生しました。(サントリーホールディングス|水と生きる SUNTORY)

つまり、現在のサントリーのウイスキーを理解するなら、

山崎=モルト

白州=モルト

知多=グレーン

そして、

響=それらを含む多彩な原酒をブレンダーが組み合わせたブレンデッドウイスキー

と覚えると非常に分かりやすいでしょう。

まとめ

日本のウイスキー史を一本の線でつなげると、こうなります。

1923年
山崎蒸溜所の建設開始

1924年
山崎蒸溜所で製造開始

1972年
知多蒸溜所の前身設立

1973年
白州蒸溜所竣工

1984年
「山崎」発売

1989年
「響」発売

1994年
「白州」発売

2015年
「知多」発売

2023年
サントリーウイスキー100周年

現在

山崎・白州・知多という異なる原酒を生み出す3つの蒸溜所

そして、その多彩な原酒をブレンダーの技術によって組み合わせることで、「響」のようなブレンデッドウイスキーが生まれています。

日本のウイスキーの魅力は、単に「海外のウイスキーを日本でつくった」ということではありません。

日本の気候、原料、水、蒸溜技術、熟成、そしてブレンド技術を100年以上かけて積み重ねてきた歴史そのものが、現在のジャパニーズウイスキーにつながっているのです。